なぜ、治療の腕がいい先生ほど、
経営で潰れていくのか?
治療院経営ラボ 代表 作尾 大介 (さくお だいすけ)
治療院経営ラボ代表・作尾大介のプロフィールです。作尾大介は、兵庫県小野市「こころ鍼灸整骨院」院長として今も現役で患者さんを診る治療家であり、廃業寸前から自費診療だけで院を立て直した経営の実践者。「技術と経営は両輪」という信念のもと、現場・経営・探究の3つの視点で“何十年と求められる治療院”づくりを支えています。
2014年の冬。私は、開業して1年あまりの自分の院に、ひとりで座っていました。
なぜ、かつて患者さんで賑わっていたはずの私の院が、こうなってしまったのか。少し、私の話をさせてください。
私はもともと、空手の指導者でした。道場で門下生を指導するなかで、ケガや体の不調によって修業の道を断念していく道場生を、何人も見送ってきました。目の前で夢をあきらめていく彼らに、当時の私は何もしてあげられません。その悔しさが、「治す側になりたい」という想いに変わっていきました。人を支える仕事であれば、一生をかけて続けられる——そう考えたことも、治療家を志した理由のひとつです。
そこから整骨院での下積みと勉強の日々が始まります。それでも稽古は欠かさず、地方の大会では優勝も果たしました。選手としてやり切って引退し、いよいよ自分の院を持つことを決意します。
開業までの下積みは、10年以上。休日も、半ドンの日も、ただ治療技術だけを学び続けてきました。今思えばまだまだ未熟で、思い返すと恥ずかしくなりますが、当時の私は、技術だけには少し自信を持っていました。若かったんだと思います。(笑)
その自信どおり、開業当初からたくさんの患者さんが来院してくださり、経営はすぐに安定しました。
——それなのに、心の充足は、一向に得られませんでした。
当時、私は2人目の子どもを授かったばかり。3歳の長女に「嘘をついたらダメだよ」と躾けながら、その一方で自分は、辻褄が合うようにレセプトへ負傷原因を書いて保険請求をし、整骨院を経営していたのです。
子どもが大きくなったとき、治療家になってほしいとまでは思わない。でも、せめて自分の仕事を誇れる父親でありたい。子どもに、治療家という仕事の面白さを胸を張って語りたい。
そう考えて、私は大きな決断をします。保険診療をやめ、自費診療だけで整骨院を運営していくことを決めたのです。外傷以外、保険は一切使わない。10年以上かけて磨いた技術で、本気の治療を届ける——そう覚悟を決めました。
ところが、今まで保険診療で来院なさっていた患者さんは、次々に来院をやめていきました。近所には、ワンコインのような単価で施術する同業者が何軒も並んでいます。「自費でしっかり診ます」と言ったところで、見向きもされない。通帳の残高は、減っていく一方でした。
「俺はこんなに治療の勉強をしてきたのに」
「技術の研鑽を続けてきたのに、なんで患者さんが来ないんだ……」
開業から、まだ1年あまり。気づけば私は、廃業の崖っぷちに立たされていました。
もう廃業か——。そう追い詰められた夜、私は一本のブログに出会います。治療院経営ラボの前代表・松村正隆先生が書いたものでした。すぐにセミナーへ申し込み、生まれて初めて、治療院の「経営」を学び始めます。
そこで私は、ようやく気づいたのです。保険診療の整骨院と、自費診療の治療院とでは、経営はまったくの別物だということに。
技術と経営は、両輪だった
答えは、シンプルでした。私は治療の勉強には取り組んできましたが、経営の勉強を、まったくしてこなかったのです。
そして、当時の私は「治療院経営」という概念を、ただのお金儲けだと勘違いしていたのです。本当にバカでした。
廃業寸前まで追い詰められたあの夜から、私は腹をくくりました。
「もっと経営を学ばなければ、患者さんに本気の治療を届け続けることすらできない」。
そう気づいてからは、寝る間を惜しんで経営の勉強に取り組みました。
すると、業績はV字回復を果たします。
徒手療法に原理原則があるように、経営にも原理原則がある。その考えのもと、松村先生から教わったことを愚直に実践しただけでした。
学びを深めるうちに、私の意識も変わっていきました。学んだ技術で患者さんの不調を取り除くこと以上に、患者さんお一人おひとりの背景に目が向くようになったのです。
なぜこの患者さんは、長いあいだ不調を抱えていたのに、今になって治療を受けたいと思ったのか
体の痛みがあることで、これまで何を諦めてきたのか
今の私が患者さんにできる最良の選択、これからお役に立てることは何か
患者さんが私のもとへ来院なさる経緯、お悩み、葛藤、生活背景、望み、立場——そうしたものに意識が向くようになり、患者さんのお役に立てるよう技術と知識を磨き続けることに、重きを置くようになりました。
すると、患者さんの反応が、見違えるように変わっていきます。
「先生のおかげで、朝起きたときの痛みがなくなった」
「私の友人も腰痛で悩んでいるから、ぜひ診てあげて」
「これからも、先生の治療を受け続けたい」
口コミや紹介が増え、症状が和らいだあとも、メンテナンスとして通い続けてくださる患者さんが増えていきました。
こうしてようやく院が軌道に乗り始めた私を、しかし、思わぬ壁が待っていました。
「教えてほしい」という声と、古株からの反発
私の治療院が軌道に乗り始めると、経営理念のまったく違う古株の治療家から、
「外傷以外は保険請求をしたらあかんって? お前、俺たちを敵に回したいんか?」
「自費診療でうまくいってるからって、調子に乗ってるんちゃうんか」
と、目の敵にされ、嫌がらせを受けることもありました。
その一方で、同業の先生方からは、まったく逆の声が届くようになります。
「保険診療に頼らない院の経営方法を、ぜひ教えてほしい」。
その声に応えるかたちで、自費診療でも院を安定させる方法を伝える「治療院成功塾」を主宰しました。2020年のことです。
しかし、塾を立ち上げた直後、世界を一変させる出来事が起きました。
コロナ禍で、証明されたこと
新型コロナウイルスの感染拡大。廃業する院も少なくないなかで、私の塾生たちは、全員が売上を伸ばしました。
なかには、緊急事態宣言のさなかに開業し、わずか8ヶ月で月商100万円を超える収益を上げた先生もいます。
もちろん、保険診療や回数券での囲い込み、値引きチラシを撒くといった手法ではありません。
このとき、私の確信は揺るぎないものになりました。
正しい経営は、不況にも、コロナのような外部環境の激変にも、簡単には揺らがない——ということです。
そして2026年、治療院成功塾は治療院経営ラボと合併し、私は代表に就任しました。
腕がいい先生が潰れるのは、「技術と経営の両輪を回せていないから」
なぜ、治療の腕がいい先生ほど、経営で潰れていくのか。崖っぷちに立った私自身が、たどり着いた答えがあります。
それは、技術と経営を「両輪」で回せていないからです。
私が考える治療院経営とは、目の前の患者さんのお悩みを汲み取り、もっとも良い手法を考え、今できる最良の治療を届けることです。
技術は、患者さんのお悩みや葛藤、未来への願いを汲み取ったうえで、はじめて届き続けます。
逆に、患者さんへの配慮をおろそかにすれば、どれだけ腕がよくても、治療院の経営は続きません。患者さんがいて、はじめて私たち治療家の技術や知識は、効果を発揮できるのです。
この関係性を築くことこそが、治療院経営の土台になります。
その土台をつくるために、私は3つの視点を大切にしています。
患者さんとの関係性を土台に、現場・経営・探究の3つが噛み合って、治療院は「何十年と求められる院」になる。それを私はこれからも、自分の院と、関わる先生方とともに証明していきます。
プロフィール
| 氏名 | 作尾 大介(さくお だいすけ)/兵庫県神戸市出身 |
|---|---|
| 保有資格 | はり師/きゅう師/柔道整復師 |
| 役職・所属 | 治療院経営ラボ 代表/一般社団法人微弱電流療法研究会 副代表/モーションパルペーション研究会 講師 |
| 自院 | こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市) |
経歴
- 関西健康科学専門学校を卒業し、柔道整復師の免許を取得
- 神戸東洋医療学院を卒業し、鍼灸師の免許を取得
- 兵庫県小野市に「こころ鍼灸整骨院」を開業
- 一般社団法人微弱電流療法研究会を立ち上げ
- 「治療院成功塾」を立ち上げ(コロナ禍で治療家を支援)
- 治療院成功塾と治療院経営ラボの合併に伴い、治療院経営ラボ 代表に就任
作尾代表とともに、治療院経営を学んでみませんか。
