〜脳科学から読み解く、先生の見た目や言動・振る舞いと治療効果の関係〜

【この記事の要約】
患者さんが「先生を選ぶか/二度と来ないか」を決めているのは、大脳辺縁系と深い関係があります。
神経系は来院から数秒以内に「快/不快」を直感で判定し、その結果が施術効果を増幅したり、打ち消したりします。特に30週(約7か月)を超える慢性痛は、受容器だけでなく、脳そのものが痛みを作り出しているため、感情が治療効果に直結します。本記事では、治療家の身だしなみがなぜ「技術」と同じくらい重要なのか、その脳科学的な根拠をお伝えします。
【結論】身だしなみは見た目の問題ではなく、脳科学の問題
最初に、結論からお伝えします。
治療家の身だしなみは、見た目の問題ではありません。 それは、患者さんの脳に直接働きかける「技術」そのものです。
なぜそう言えるのか。 そのカギは、患者さんの脳の中で起きている「快/不快」の自動判定にあります。
質問:技術セミナーに通っても、治療効果が伸びない理由
「治療がうまくいかないのは、自分の技術が足りないからだ」 そう思って、技術セミナーに通った経験はないでしょうか。
10年以上の臨床経験を積んでこられたにも関わらず、リピート率が思うように伸びない。
そんな悩みを抱える先生のお話を伺うと、原因が「技術」だけではないことに気づかされる場面が多くあります。 原因は、もっと手前にあるのです。
患者さんは、来院した瞬間からすべての感覚で情報を受け取っている

患者さんが治療院のドアを開けた瞬間、その方の脳には膨大な情報が入力されています。
- 視覚:先生の見た目、白衣の清潔感、待合室の様子
- 聴覚:声のトーン、院内の音、BGM、スタッフの私語
- 嗅覚:先生の体臭・口臭、院内のにおい
- 触覚:椅子の硬さ、温度、ベッドカバーの感触
これらすべてが、患者さんの脳に「データ」として蓄積されていきます。 本人が意識する/しないに関わらず、情報は自動的に処理されているのです。
脳の中には「感じる→感情になる」決まったルートがある「パペッツの情動回路」
アメリカの神経解剖学者ジェームズ・パペッツは、感覚情報が「感情」に変換される、脳内の決まった一本道を提唱しました。 これが「パペッツの情動回路(Papez circuit)」です。
「パペッツの情動回路(Papez circuit)」とは
Papezの回路(Papezのかいろ、英:Papez circuit)とは情動や記憶に重要と考えられる神経回路である。
海馬に起始し海馬に戻って来るループ構造を持つ。提唱者であるJ. Papezは情動の基盤としてこのPapezの回路を発表したが、現在ではむしろ長期記憶との関連が深いと考えられている。
wikiぺディアより引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/Papez%E5%9B%9E%E8%B7%AF
詳しい解剖学的な経路を覚える必要はないかと考えます。 ただ一つだけ、知っておいてほしいことがあります。
患者さんの脳の中には、「感じたこと」を「感情」に変換する、決まった回路がある。
もし、深く知りたい先生は「リッピンコッドシリーズ イラストレイテッド 神経科学P395〜」をお読みください。

たとえば、カレーのにおいを嗅いだ瞬間に「お腹がすいた」と感じ、ご飯が食べたくなる。
雑巾のにおいを嗅いだ瞬間に、勝手に顔をしかめてしまう。
話は少しそれますが、僕はセブンイレブンでコーヒーの匂いを嗅ぐと、チロルチョコが食べたくなり買ってしまいます。
まんまと戦略にハマっているわけです。笑
これらはすべて、情動とよばれる自身の感情とそれにともなう、身体的な反応が起こっています。
情動にはパペッツの情動回路と深い関係性があります。
そして、情動反応において「快/不快」を判定しているのが、大脳辺縁系を含む神経系になります。
神経系は0.5秒で「快/不快」を判定する
神経系が判定しているのは、たった一つだけ。
「気持ちいいか、嫌か」
これだけです。
- 論理ではなく、直感で
- 言葉になる前に、瞬時に
- 本人の意思とは関係なく、自動的に
過去のラボでも、繰り返し会員の先生にお伝えしてきました。
「問診は、患者さんがドアを開けた瞬間から始まっている」
その本当の意味の一つに、神経系がたった数秒で「快/不快」を判定しているメカニズムも関係があります。
特に女性の患者さんは、大脳辺縁系の一部になる扁桃体の機能が男性よりも鋭敏に働く傾向があります。
ラボ会員の先生のデータを見ても、治療院に来院なさる患者さんの割合は圧倒的に女性が多い傾向があります。
扁桃体は、母性と強い関係があります。
そして治療院に来られる方の多くが女性であることを考えると、私たち男性治療家(特に中年)は、不快なシグナルを発信することに対して、必要以上に慎重でなければなりません。
30週を超える慢性痛は、患部だけが問題ではない
痛みには、まったく性質の異なる2つの種類があります。
| 急性痛 | 慢性痛 | |
|---|---|---|
| 期間 | 数週間程度 | 30週(約7か月)以上 |
| 発生源 | 末端(傷ついた組織) | 中枢(脳そのもの) |
| アプローチ | 原因部位への手技 | 脳の状態を変えることが先決 |
近年の痛み研究では、痛みが30週を超えて慢性化すると、扁桃体・島皮質・眼窩前頭皮質・内側前頭皮質といった「感情に関わる脳領域」が、強く活性化することが分かってきました。
※著書:半場道子「慢性痛のサイエンス」より引用。興味ある先生は読んでみてください。
つまり、痛みはもはや「患部だけの問題」ではなくなっているのです。
慢性痛は、侵害受容性のものに限らない。感情が強く関係している。
これが、現代の痛み科学が指し示している事実です。 だからこそ、慢性痛を抱える患者さんに対しては、感情面への配慮が施術効果を左右します。
神経系が「不快」と判定した瞬間、治療効果は確実に下がる
神経系が「不快」と判定した瞬間、脳と体の中ではこんな反応が連鎖的に起こります。
- 交感神経が優位になる
- 体が緊張し、筋肉が硬くなる
- 血管が収縮する
- 痛みの「ボリュームつまみ」が上がる
- 施術の効果が出にくくなる
仮に技術力が「10」あったとしても、神経系が「不快」と判定した時点で、患者さんに届く効果は「3」程度まで落ちてしまいます。
逆に、技術力が「5」しかなくても、神経系が「快」と判定すれば、患者さんに届く効果は「8」まで上がるのです。
身だしなみは、技術の何倍にもなる「増幅装置」であり、同時に、技術を打ち消す「消去装置」でもある。
これが、身だしなみが「技術」と呼ぶに値する理由です。
AIに「清潔感のある40代治療家のイメージ」を生成してもらったところ
試しに、AIに「世間一般の40代治療家のイメージ」を生成してもらったところ、次のような画像が出力されました。

腕毛もなく、髭も綺麗に整えられ、白衣も清潔で、体型も崩れていない。 清潔感のともなった治療家像です。
これが、世間一般がイメージする「普通の清潔感を持った40代治療家」の基準なのです。
つまり、これ以下の身だしなみは、患者さんの脳内では「基本的に不快」と判定されると思っておく必要があります。
これが、身だしなみが「技術」と呼ぶに値する理由です。
あ、これは私が興味本位でAIに「この画像とは正反対の40代治療家を生成して」と、お願いしたら以下の画像が生成されました…
こうならないようにしたいものです。

だから、身だしなみを今日から整えていきましょう
ここまでお伝えしてきた理論を踏まえると、日々の身だしなみへの取り組みが、治療効果に直結することがお分かりいただけるかと思います。
最低限、以下の8つは押さえておきたいポイントです。
1. 毎朝、出勤前に必ずシャワーを浴びる
寝汗は、自分が思っている以上に臭うものです。 「自分は大丈夫」と思っている先生ほど、ご家族や患者さんは口に出さないだけで、においを感じています。
朝のシャワーは、体臭・寝汗をリセットする最低限の作業として、必ず習慣にした方がいいです。
2. 治療着は毎日洗濯する(2日続けて着ない)
治療着は、汗と皮脂を一日中吸い込んでいます。 ヴィンテージのジーンズと違って、白衣に経年変化の魅力はありません。
1年以上同じ治療着を使い続けている先生は、まずは買い替えと、毎日洗濯のルーティンから整えていきましょう。
3. 歯間ブラシ・舌ブラシは、毎回の歯磨きとセットで行う
歯磨きだけでは、口臭はなかなか取れません。 口臭の主な原因は、歯間に残った食べかすと、舌の表面につく舌苔(ぜったい)です。
最初は歯茎から血が出たり、舌ブラシで「オエッ」となったりしますが、続けるうちに慣れていきます。
ここまでやっても口臭が残るようでしたら、歯科で歯周病チェックを受けてみてください。
4. 翌日が診療日のときは、にんにく・ニラ・カレー・多量のアルコールを控える
食べたものの香りは、翌日まで体のにおいとして残ります。
前日の食事は、翌日の患者さんへの配慮だと思って、意識して選んでみてください。 深酒も、翌日の体臭・口臭・肌の状態に大きく影響します。
5. 日頃から運動習慣を心がける(有酸素運動・筋トレ)
体型維持は、見た目のためだけではありません。 「治療家としての説得力」と「体臭・口臭の改善」のためにも、運動習慣は欠かせません。
肥満の影響で膝を悪くしている患者さんに体重について触れる場面で、もし自分の体型が崩れていたら、その言葉に説得力は宿りにくくなります。
週に2〜3回の有酸素運動と、週1〜2回の筋トレを目安にしましょう。
6. 夏場は、お昼の診療前に靴下を交換する
夏場は、午前の診療だけでも足元のにおいがこもりがちです。 施術中に靴を脱ぐ場面はなくとも、足元から発するにおいは、想像以上に院内に広がっていきます。
お昼の休憩のタイミングで、新しい靴下に替えるだけでも、午後の印象は大きく変わります。
7. 腕毛・髭・鼻毛・耳毛を処理する
施術中、患者さんの目線にもっとも入るのは、先生の「腕」です。 腕毛がもじゃもじゃのままでは、それだけで不快感が伝わりかねません。
鼻毛や耳毛も同様で、特に下から覗き込まれる角度では、一瞬で見えてしまいます。 昭和の「男らしさ」のイメージを引きずらず、令和版の清潔感へとアップデートしていきましょう。
8. 髪型を整える(寝癖を残さない)
前髪だけが寝癖でついていなくても、横や後ろが跳ねていれば、患者さんからは丸見えです。 鏡で正面だけでなく、横と後ろもチェックする習慣を持ちましょう。 1〜2か月に1回は美容院・理容院で整えていただくこともおすすめです。
特別なテクニックは、ひとつもありません。
ですが、この基本を「毎日続けられるかどうか」が、患者さんの脳に発信するシグナルを大きく変えていきます。
令和の時代、最低限の身だしなみを意識しないと選ばれない
「ここまでやる必要があるのか?」 そう感じる先生もいらっしゃるかもしれません。
しかし、令和の時代、これくらいはしないと、やはり患者さんからは選ばれないと考えます。
私たち治療家は、不調を抱え、お悩みを抱えた患者さんと毎日向き合う仕事をしています。
技術を磨くことと同じくらい、身だしなみを整えることが、患者さんに届ける治療効果を変えていくのです。
技術の習得にはおよそ1万時間の年月と労力が必要ですが、身だしなみを整えることは明日からできることだと考えています。
このブログがお役に立てれば嬉しく思います。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 技術には自信があります。それでもリピート率が伸びないのはなぜでしょうか?
A. 技術がどれだけ高くても、扁桃体が「不快」と判定すれば、患者さんに届く効果は大幅に下がります。多くの場合、リピート率低下の原因は技術ではなく、身だしなみや院内環境にあります。技術を磨く前に、まず「マイナスをゼロにする」ことから始めてみてください。
Q. 慢性痛の患者さんへのアプローチで、特に気をつけるべきことは何ですか?
A. 30週を超える慢性痛は、脳そのものが痛みを作っている状態です。感情面が施術効果を強く左右しますので、技術以前に、不快なシグナル(におい・見た目・声のトーン)を発信しないことが、治療効果を下げないための前提条件となります。
Q. 治療院経営ラボでは、どのような学びが得られますか?
A. 治療院経営ラボでは、技術と経営の両面から、治療家として成長するために必要な学びを提供しています。月次の勉強会や個別指導など、現場ですぐに活用できる実践的な内容を扱っております。
ご興味のある先生は、ラボのHPよりお気軽にお問い合わせください。
■ 治療院経営ラボで学びたい方へ
「リピート率を、技術以外の側面から本気で上げたい」
「治療の現場と、経営の両面から学びたい」
「同じ志を持つ治療家と、ともに高め合いたい」
そう感じてくださった先生は、ぜひ治療院経営ラボのHPよりお問い合わせください。
仲間とともに、ひとつずつ階段を上ってまいりましょう。
監修者情報
治療院経営ラボ 主宰 作尾 大介(さくお だいすけ)
国家資格:柔道整復師・はり師・きゅう師
・こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市)
・こころ整体院(兵庫県加古川市)院長
整骨院での下積みと総合病院での臨床経験を経て、こころ鍼灸整骨院を開業。 現在は治療院経営ラボを主宰し、治療家の育成に取り組んでいる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(監修 治療院経営ラボ 主宰 / 柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾 大介)

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