こんにちは、治療院経営ラボ主宰の松村です。

ほとんどの治療家が、開業する前にどこか治療院で働いてから開業すると思います。
(国家資格をお持ちの場合は特に)

治療院で働いていたら、不満も持つでしょう。

「俺(私)だったらもっとこうするのに!」

って思うことは少なくないでしょう。
僕もずっとそう思って働いてきました。
ただ、我々の頃と今とでは、不満のレベルがあまりにも違うように感じます。
開業って、そんな甘くないです。

そのあたりをツラツラと書いていきたいと思います。

 

逃げ開業が増えた

そもそも、開業して治療院を経営していくためには、治療家とは別の資質が必要です。
そう、経営者としての資質が。
それは天性の部分もありますが、そういう思考や行動を勤務時代から育むことでも治療院経営者としての資質を持つことができます。

僕がこの業界に入った頃は丁稚奉公だったので、雇われている間の給料は本当に安いものでした。
結婚して家庭を持つ、なんてことは絶対に無理で、それどころかコンビニで合計金額を気にしながら買い物するような生活でした。

2千円くらいの材料費でちゃんこ鍋を大量に作って、朝と晩はそれ、昼は学食で1日500円以下の出費に抑えてなんとか生きていける、そういう生活水準でした。

ただ、なぜそれでも修業してたかというと、将来自分で開業して成功したいから。
なので、最初から目的が開業で修業をしたわけです。

今は労基問題や福利厚生がうるさいので、日本では僕らの頃のような昭和なことはできません。
だからこそ、開業せずとも生活ができてしまう。
家庭も築けてしまう。

整骨院業界であれば今、厳しくなる保険問題でチェーン展開しているところほど厳しい状況になっていることが多いです。
増える回答書、報道される不正問題、そして何より日本の人口へ減少し続けています。
僕が修業してた頃は、1日200人、300人来るというパターンが多かったですが、都心部でもうそんな数字を出せるところは少ないのではないでしょうか。

あ、田舎は別です。
数年遅れていることと、そもそも全体的な院数が少ないため、僕が修業してた最後のほう、すなわち20年弱くらい前の方法をやればまだまだ1日100人来る院を作ることはできるでしょう。
でも、田舎で成功して調子に乗って東京とかに分院出すとだいたい通用しなくて潰れますけどね。

ちょっと話がそれたので戻します。
業績が悪くなると、経営者はどうするか?
古株はどうしても給料が高いので上手く言いくるめて退職してもらうように持っていきます。

よっぽど仕事できるならそんなことしませんけど、もしそうなら退職させるようなことはしません。
優しく諭す場合もあれば、あえて居づらくするようにすることもあるでしょう。

もしくは、出世できないことに腹を立て、自ら退職する場合もあるかもしれません。

「どこで働いてもどうせ一緒だし、どうせなら開業するか」

という考えで開業する先生も少なくはありません。
何年勤務してきたかわかりませんが、マニュアルで決められた手法だけ何も考えずにやり続けた勤務年数は、開業して自分で治療院を経営する場合は全く通用しません。
チェーン展開全てが罪悪なわけではなく、そうするまでの経緯や、経営手法や経営者の手腕など盗める部分はいっぱいあり、そして足りない部分は何かを考え、もし自分が経営するならどうするかを勤務している期間に考え続けていなければならないのです。

それらをしないで、ただ決められた時間に与えられた仕事をこなしてばかりで時間を浪費した人が、開業して上手くいくはずがないのです。

 

 

そもそも流行っている院で働いた経験がないままの開業

さほど流行っていなくても、一人くらいなら雇用できるという院は少なくありません。
院長も技術を教えることはできても、経営を教えることはできない。
院内に患者さまが溢れかえる、なんてことを見ることもないまま開業してしまう、というケースも最近は多いのではないでしょうか?

また、そういうところは院長が優しい場合は、治療もそこそこ自由にさせてくれることが多いです。
となると、未熟な段階からわけのわからない治療法にハマってしまって、次第に「俺はこの治療法で開業するんだ」という甚だしい勘違いをしてしまいます。

そもそも、患者さまは治療法を求めて治療院に来るのではありません。
治る、という結果を求めて治療院に来るのです。

そもそも、万能な「たった一つの治療法」なんてものが本当に存在するのでしょうか?

筋肉にアプローチする技術、骨格や関節にアプローチする技術、エネルギーや東洋医学系、色々存在しているのは、それぞれが得意なジャンルというか、カテゴリーというか、そういうものがあるからではないでしょうか?

また、たった一つで全てを治すテクニックがあると仮定したところで、その技術を5年10年習ったところで全てを治せる治療家になるのでしょうか?

答えはNOしかありません。

 

 

スポーツで大事なこと

治療院経営なのに、なんでいきなりスポーツやねんと思われたかもしれません。
まあ我慢して読んでください。

野球でもサッカーでも、基礎のフォームというものが存在します。
ボクシングでも、空手でもみんなそうですね。

柔道なら受身を一番最初に練習するわけですが、面白くはないですが受身できないと大怪我しますので、いやでもなんでも絶対に覚えないといけないものです。

スポーツにおける故障、特に外傷ではなくスポーツ障害の場合はフォームに問題があることも少なくありません。
弱い部分をカバーしようとしたり、トップ選手の応用編のフォームを真似たりして障害を引きおこすというのは臨床でたくさん診ることができます。

我々治療家は、スポーツ障害の場合は単に患部を治療するだけでなく、フォーム改善の提案もしないといけないですし、時には指導者とコミュニケーションを取って障害が起こりにくい環境にしていただく必要もあります。

それほど、スポーツにおいて基礎というのはとても大切です。
基礎を疎かにしている選手で大成した選手はいないのです。

 

 

治療院経営の成功も基礎ありき

治療院経営もスポーツと同じで、本来は基礎があります。
成功するしないは、治療院経営の基礎を身につけているかどうか、にかかっていると言っても過言ではありません。

そして、開業したもののずっと売上が伸びずに困っている先生は、だいたいこの基礎ができていないということがほとんどです。
解剖学や生理学をいくらわかっていても、経営とは別モノです。
ただ、治療院経営の本質は、いかに患者さまが治療を受けやすい環境を作るか、いかに通院しやすい環境を作るか、そしていかに治りやすい環境を作るかというところにあるので、治療をちゃんと勉強していれば自然にできることがたくさんあります。

ゆえに、本当に治療できる治療家は売上にさほど困らないという論理になるのです。
逆に、売上に悩んでいる治療家は、自身で治療できているつもりでもちゃんとできていない、未熟であるという論理が成立するのです。

 

治療院経営における7つの基礎

では実際に、基礎のポイントを紹介させていただきます。

①お金の管理

これは、盗まれないように金庫に入れるというバカげたものではありません。
経営で大事になってくるのは、実は入ってくるお金を増やすことよりも先に出ていくお金を減らす努力をすることです。

経費を簡単に分類すると、固定費と変動費とにわかれます。
治療院の経営が安定しない先生は、変動費を出ししぶり、固定費を増やしていきます。

ホームページ制作で一時期流行った「制作費ゼロ、月々〇万円のリース代だけ」というのにまんまとひっかかるのもそれです。

リースなんてクーリングオフも解約もできない、悲惨なものです。
ホームページというのは、ちゃんと作ればそれなりの制作費がかかります。
最近は「制作費にお金かけるなんて」みたいなコピーもありますが、それは間違いです。
安かろう、不味かろうなのです。

うちの法人もホームページ制作をやっていますが、しっかり作り込むこと、そして文章の添削、そして腕の良いプロカメラマンの撮影と、良いホームページを作り込むために、それなりのサービスを提供しています。

一時的にお金が出ていくのは変動費です。
1度支払えばあとは払わなくてもいい。

ホームページがわかりやすいので例として出しましたので、このままホームページを例にします。

制作費50万円のホームページ。
制作費ゼロで月々3万円、7年のリース契約のホームページ。

どちらが高いでしょうか?

文字に書くと四則演算もしやすいので、

50万円<3万円×84ヶ月=252万円

ということが理解できると思います。

全く同じホームページを手に入れたと仮定しても、200万円以上損をしているわけです。
こういうことが感覚的に理解できない先生の治療院は、売上がそこそこあったとしても手元に残るお金が少なくてヒーヒー言ってることが多いです。

 

②院の規模

狭いほうがいいか広いほうがいいかだけで言うなら、広いほうがいいです。
ただ、治療する人が院長一人なのに50坪のテナントはさすがに必要ありません。
しかし、一人で治療を行うにしても、ベッド1台(床施術の場合なら1ブース)では話になりません。

「昔からやってる人はそれで売上出てるぞ」

という声が聞こえてきそうですが、それは昔に開業したから。
今は、というかここ10年20年でそれはあまり通用しません。

 

③院の内装

清潔であることはもちろんですが、過度にオシャレにしなくても構いません。
ただ、最近はサロン風な作りにしている治療院がありますが、そういう作りのところはだいたい売上に困っています。
まず間接照明はアウトです。
本来、治療は肌の色を観察することもありますし、柔整なら発赤や腫脹を診ることもしないといけません。
薄暗い部屋でそれができるのか、という話になります。

基本的には壁の色は白でOKです。

植物は置きすぎないほうがいいです。
よく、アホみたいにたくさんおいてジャングルみたいになっている院がありますが、アウトです。

我々有資格者は医療人の端くれなわけですから、医療機関に近い雰囲気にするほうが望ましいのです。

 

④受付・誘導オペレーション

実は、治療院経営において治療技術と同じくらい大切なのが受付・誘導です。
受付の接客態度が悪いのは論外ですが、スムーズな受付業務ができるかできないかで売上は変わります。
人を雇用することを極端に嫌がる治療家も多いですが、治療院を開業する以上は経営者ですので、人を雇用して一人前だと言えます。

金銭授受ひとつでも、マナーがあります。
治療費がある一定以上の金額なら、そういうところもしっかりしておかなければいけません。

また、それとともに受付スタッフが困らないようにするためにも受付マニュアルは必須となります。

患者さまの誘導もスムーズに、かつ患者さまに迷わせないようにしないといけません。
脱いだ靴はどこにおくのか、問診票は座って書くのか立って書くのか、どこに座るのか、荷物はどうするのか、どのブースにいけばいいのか・・・等々、一切患者さまに考えさせてはいけません。

それだけで患者さまは緊張状態になるので治療効果も出にくいですし、精神的に不安を感じるため、問診もしにくくなります。
案外とこういうところでリピート率を落としている治療院は多いです。

僕の院の場合は、受付スタッフがJALの国際線のグランドクルーだったこともあり、JALで当然だったマナーをマニュアルに取り入れております。

JALでも定期的に接客トレーニングがあったそうですから、B to Cという、直接カスタマーと接する業種はすべて接客トレーニングは必須となります。

また、本来はこのあたりを踏まえた上で誘導しやすいように内装を作っていく(患者動線とスタッフ導線を考える)のが普通です。

 

⑤電話応対

受付・誘導とともに大切なのが電話応対です。
完全一人院だとどうしても経営者である先生が電話に出てしまいますが、これが一番望ましくありません。
どこかの会社に電話して、いきなり社長出ませんよね?

やはりちゃんと受付スタッフを雇用して、院長がなるべく電話に出なくても良い環境を作り、なおかつ電話対応マニュアルを作成しておく必要があります。

また、下手に治療にハマってる先生がよく電話で治療の説明をしたがることが多いですが、これも間違いです。
電話はなるべく短時間で、できれば予約を取って終わるくらいにしましょう。

 

⑥予約制にする

ラボでは完全予約制を推奨しています。
その理由は、予約をコントロールすることで、時間配分ができるようになるからです。
臨時休診で離脱、ということも防げます。
また、予約を取るのが面倒な患者さまというのは意識が低いので、そういう患者さま避けにもなります。
意識の高い患者さまだと単価がそこそこ高くても通院しますので、売上を確保したままに労働量を減らすことができます。

若いうちはたくさん診て朝仕事して気がついたら夜だった、みたいなのも悪くありませんが、年齢とともにそういう状況は命を縮めます。
また正直言って、違いがわかる患者さまは少ないです。
町のマッサージサロンやエステと同一視する人も少なからずおられます。
違いのわかる患者さまの離脱を防ぐためにも、完全予約制はとても良いシステムなのです。

 

⑦治療時間

ラボでも会員の先生方にうるさく言わせていただいているのは治療時間についてです。
一時間も二時間も患者さまに何してんねん、ということです。
長くても予約枠30分で運営できるようにしないといけません。
そして、それが無理なら本来は開業すべきではありません。

「患者さまの症状を取り切りたいし・・・」
「なんとなく帰らせ辛くて・・・・」

言い訳は色々あります。
でも、所詮言い訳です。

治療とは、技術以外に大切なことはしっかりきっちりケジメをつけること。
それができないということは、人生においてもケジメをつけられないということです。

厳しい言い方ですが、患者さまの暇ではありません。
治療院に行くまでの往復時間、準備の時間を含めたら、もし1時間も治療してしまうと合計2時間は潰れる可能性があります。
となると、足が遠のく(リピートしない)ということにもつながるのです。
患者さまを治してあげたい、と思えば思うほど、短時間で済ませられるようにするべきなのです。

 

 

まとめ

さて、今回は治療院を経営するにあたっての、至極当然なことを書かせていただきました。
厳しく表現した部分もありますが、売上を出せる治療院を作らなければ売上は出ない、ということなのです。

となると、我々治療家が治療院を経営する際に一番やってはいけないことは何かというと、タイトル通り「自分の好きなようにすること」なのです。

ありきたりな表現ですし、違法なことをやっている院も使っている言葉なので、言えば言うほど胡散臭くなってしまうのですが、我々の治療院は患者さまのためにあります。

我々はアーティストではありません。
もしアートなら、患者さまの症状のことは「症例」と表現せずに「作品」になってしまいますよね?

患者さまは、患者さまの悩みは我々治療家の作品の材料ではありません。
自分の好きを表現する、とかわけのわからないキラキラした甘いことを言っているようでは、治療院経営で安定した売上を出し続けることはできないのです。

良い治療院作りをするためには、まず患者さま目線になって考える必要があるのです。

 

 

※売上には困っていないけれど7つの基礎のどれかが欠けていた、という先生へ

治療院を10年以上やってきて、月商100万円なんてスタートラインは余裕だけど、読んでみたら基礎が欠けてるという先生がおられます。

欠けていても売上にお困りでない、ということ自体は全く問題はないと思います。
ただ、忙しくされているから健康面が心配ではあるのです。

基礎をすべてコンプリートして、なおかつラボで学ぶことで売上を伸ばしながら労働時間や労働量を減らすことができます。

なぜ労働時間や量を減らす必要があるかというと、それは治療家の健康問題です。
たくさんの患者さまを治療する、ということを長年続けるとどうしても命を縮めてしまいます。

鍼灸の世界では昔から、「良い治療家は短命だ」と言われています。

しかし、もし先生が動けなくなってしまったら?

そう、困るのは患者さまなのです。
でも、患者数を減らすだけだと売上が落ちてしまいますから、「うちの子、今医学部行ってるからそれはきつい!」というようなことになる恐れもあります。
なので、休みを増やしても収益が上がる仕組みを作っていくことが、良い治療家の最大の課題なのです。
そういう先生は、患者さまのため、家族のため、そして自分自身のためにもぜひ労働時間や量を減らしつつも収益を上げる工夫に取り組んでいただければと思います。

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