いつも治療院経営ラボのホームページをご覧いただき、ありがとうございます。 代表の作尾大介です。
去る6月28日、神戸東洋医療学院にて、卒業生の先生方や在校生の皆さんに向けて、『開業後に失敗しないために知っておくべき現実 〜成功する治療院・消える治療院の違い〜』というテーマで講師を務めさせていただきました。
今回はそのご報告とあわせて、当日お話しした内容の一部をご紹介したいと思います。

いま、療術業界で起きていること
東京商工リサーチの調べによると、2025年度に倒産した療術業(マッサージ業)は108件。1996年度以降の30年間で最多、過去最高の数値となりました。
一方で、日本人の平均所得はこの20年ほとんど変わっていないのに、ガソリンは約1.3倍、お米は約2.2〜2.4倍に値上がりしています。
人口は減り、患者さんは相対的に減っていくのに、治療家と治療院の数は年々増え続けている。
これが業界の現実です。
時代は昭和から平成、そして令和へと移り変わりました。20年前と同じやり方では、治療院の経営が難しくなってきているのです。
一番割を食っているのは、新人の先生たち
こうした厳しい状況の中で、いちばん大変な思いをしているのは、国家資格を取得したばかりの新人の鍼灸師・柔道整復師の先生たちだと私は感じています。
経営不振で人を雇用できる治療院が減った結果、個人の治療院に就職して技術を磨くという道が細くなっています。
一方で、大手の治療院に就職しても、仕事の中心はマッサージや介護施設でのリハビリであることが多く、若いうちに施術の技術をじっくり磨く機会そのものが減っているのが現状です。
そして年月を重ねて「開業したい」と思ったとき、十分な技術や知識を持てないまま開業してしまい、患者さんに満足していただけず、経営も安定しない。
そんなケースが後を絶ちません。
廃業した治療家たち ― これは、すべて実話です
講義では、実際に業界で起きた廃業の事例をお話ししました。
一人目は、「いい場所」を選ばなかったS先生。

国家資格を取って5年間の下積み、さらに技術セミナーに5年間通い続けた努力家です。
師匠が雑居ビルの一室で予約の埋まる人気院を営んでいたことから、「自分もできるはず」と開業資金を抑え、マンションの一室で開業しました。
しかし3ヶ月後、患者さんが全然来ない。広告もホームページもSNSもやったのに、新規はたった5名、全員が1回きり。部屋にはキッチンから料理の匂いが漂い、玄関には先生の靴。患者さんは「治療を受けに来た」のではなく「先生の家に上がった」気分になっていたのです。
修行先では分院長を任された人気の先生が、開業場所の選択だけで、最後は2,000万円を超える借金を抱えることになりました。
二人目は、「いつものお客さん」で成り立っていた院。

かつては待合室に行列ができるのが当たり前で、患者さんの6割がご高齢の方でした。
ところが2020年、コロナ禍でその前提が音を立てて崩れます。重症化リスクの高いご高齢の方がぱったり来なくなり、予約制が浸透して1日に診られる人数に上限ができ、「窓口数百円+保険でたくさん診て稼ぐ」薄利多売の構造が通用しなくなった。悪いことは何ひとつしていない。
ただ「これまで通り」だっただけ。時代が変われば、昨日までの正解が廃業の原因になるのです。
三人目は、「開業すらできない」先生たち。
「借金を返せなくなったら…」
「家族を路頭に迷わせたら…」
と不安で動けず、できない理由ばかりを数えてしまう。実は、私自身も開業前は眠れないほど不安でした。だからこそ、この気持ちは痛いほどわかります。
ここで強調したいのは、廃業した先生の中に、努力していなかった人は一人もいないということです。
廃業と成功を分けたものは何か ― 「標」と「本」
東洋医学には「標治」と「本治」という考え方があります。
講義ではこれになぞらえて、こうお伝えしました。
売上がない、患者さんが来ない。それは表にあらわれた結果、つまり「標」にすぎません。
それを生んでいる根っこ、「本」にあるのは、自分本位 ― 利他の心を持てていないことです。
「自分が」「自分の技術が」という我執こそが本症であり、売上と考え方は表裏一体。
患者さんという「他」がいて、はじめて治療家という「我」が成り立つのです。
成功した先生たちの実話 ― 全員、治療院経営ラボの先生です
一方で、同じ時代に開業し、成功している先生たちがいます。講義でご紹介した3名は、全員が治療院経営ラボで学ばれている先生です。
ユーカリ整体院の樋口亮太先生(30歳・整体)は、かつて人の話が耳に入らず、自宅の一室で開業しても患者さんはゼロでした。
しかし「自分の目線じゃなく、患者さんの目線で考えないといけないのかも」と気づいてからは、週に一回、患者さんに向けた健康情報をブログや動画、SNSで配信するように。
開業初月から黒字化し、広告費0円で毎月10人以上の新規患者さんが来院、現在は平均月商150万円をクリアされています。

ちょう鍼灸整体院のちょう先生(32歳・鍼灸師)は、同僚から「あいつは絶対成功できへん」と言われ、開業初月の売上はたった8万円でした。
転機はコロナ禍。地元の挨拶回りで顔なじみの商店が次々廃業し、「私たちの分も頑張ってください」と涙ながらに託されたことで、利他のスイッチが入ります。
知人が肩こりで困っていると聞けば、すぐに肩こり対策のブログを書いてURLを送る。相手の立場に立ち、時間も労力も惜しまない。
その結果、3ヶ月目に黒字化し、広告費0円で年間100人以上の新規患者さんが口コミと紹介で来院するようになりました。

いしだ鍼灸整骨院の石田将太朗先生(35歳・柔道整復師/鍼灸師)は、友人も知人もいない四国の町で、パソコンも全くの素人という状態から開業されました。
地元の喫茶店や商店に毎日通って地域にご縁を育て、コロナ禍には消毒液を地域施設へ寄付。
開業前からブログと動画で健康情報を配信し続け、開業後わずか8ヶ月で月商100万円を達成。2年後には平均月商180万円となり、地域のラジオやメディアにも紹介されています。

そして嬉しいことに、ちょう先生と石田先生は神戸東洋医療学院の卒業生。
後輩の皆さんの前で、先輩の実例をお伝えできたことは、私にとっても特別な時間でした。
ラボで伝えているコンテンツは、患者さんと向き合う時にこそ活きる
治療院経営ラボで学ぶ経営の原理原則は、決して「売上テクニック」ではありません。
患者さんと向き合う時にこそ活用できるものです。
たとえばドラッカーの経営原則。
「企業の目的は顧客の創造にある」は、治療院に置き換えれば「患者さんの悩みや困りごとを解決する」こと。「マーケティングの理想は販売を不要にすること」は、「患者さんのお悩みに寄り添って解決すれば、口コミや紹介が自然と生まれる」こと。
「顧客中心主義の徹底」は、「患者さんの気持ちを一番に考える」ことです。経営学の言葉は、そのまま臨床の姿勢に翻訳できるのです。
臨床の場面でも同じです。
視診で見る、聴診で聞く、五臭で感じる、問診で質問する、検査で現状を把握する。
そのうえで、患者さんに最も適した治療や来院プランを提案する。これが患者さんと向き合う基本です。
そして忘れてはならないのは、患者さんもまた、同じ目で私たち治療家を評価しているということです。
清潔感や表情、声のトーンや話し方、治療室の匂い。悩み事を聞いてくれるか、寄り添ってくれるか、わかりやすい説明と最良の治療プランを提案してくれるか。
患者さんは「最良の治療を受けたい、怖い思いをしたくない」と願って院の扉を開けます。
だからこそ、患者さんのお話をよく聞き、質問し、相手を慮ること。
そのうえで技術の研鑽に励むこと。この両方があってこそ、患者さんに安心していただける施術ができるのです。
会場で相次いだ、新人の先生方からの質問
当日は、これから業界を担う先生方から、たくさんのご質問をいただきました。
- 「これから鍼灸師として開業するなら、どんな技術を学び、どんなセミナーに参加すればいいですか?」
- 「治療院を経営するなら、今からどんなことに取り組めばいいですか?」
- 「臨床で手のしびれを訴える方には、どこを検査して治療すればいいですか?」
一つひとつのご質問に、私自身の経験をもとにお答えしました。たくさんの新人の先生方とお話しするなかで、私自身も開業したころの初心を思い出すことができました。本当にありがたい時間でした。
技術と経営は「両輪」です
治療院経営ラボでは、技術の勉強と経営の勉強は両輪であるとお伝えしています。
どれだけ素晴らしい技術を持っていても、経営を学ばなければ治療院は続きません。
逆に、経営のノウハウだけを追いかけても、患者さんに満足していただける技術がなければ、選ばれ続ける治療院にはなれません。
時代や環境が変わっても変わらないもの、それこそが原理原則。
技術や知識を学び続け、人間性を磨き、患者さんのお悩みを解消し、自身の経験から得た正しい情報を発信し続ける。動き続けることで、経営は安定していくのです。
治療院経営ラボの取り組み
治療院経営ラボでは、これから鍼灸院を開業したい先生、保険診療に頼ることなく接骨院を開業したい先生、あるいはこれから保険診療に頼らない接骨院へシフトチェンジしていきたい先生たちをサポートする取り組みを行っています。
技術と経営の両輪を学び合える場として、同じ志を持つ先生方とともに歩んでいける環境を整えています。治療院経営ラボに興味のある方は、ぜひホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
おわりに ― 母校で講師を終えて
最後に、私自身の感想を少しだけ書かせてください。
神戸東洋医療学院は、私が鍼灸師になるために通学した母校です。
実を言うと、当時の学生生活の思い出は、そんなに多くないんです。
なぜかと言うと、当時は仕事をしながら勉強し、国家資格を取得するのは当たり前でした。
毎朝5時台に起きて、帰りは23時、24時。ときには深夜を回ることもありました。お金もない、時間もない、そして技術も経験も何もない。そんな生活をしながら過ごした3年間でした。
入学したのは確か26歳、卒業する頃には29歳になっていました。鍼灸師の国家資格を取得して卒業式を迎える前日、東日本大震災が起きたことを、僕は今でも覚えています。
あのとき亡くなった方々は、自分の目標や夢、そして大切な人たちを幸せにしたいという想いを、胸に抱えたまま亡くなっていった。
だから僕は、挑戦できること自体がありがたいんだと思って、全力で挑戦を続けたし、勉強も続けたし、いろんなことにチャレンジができました。
こんな僕でも、ありがたいことに45歳になった今、治療院経営ラボの代表になれました。
そして2つの治療院の院長として、徒手療法を教える講師として、経営を教える講師として活動ができています。
今回の講義では、卒業したての先生方、学生の方々、私よりも大先輩の方々、そして当時私たちを指導してくださった先生方とお話しする機会がありました。
セミナーの際、私は皆さんに問いかけました。どうして鍼灸師になりたかったのか?
なぜ鍼灸師の資格を取得しようと思ったのか?
Zoomでの配信もあったため、お一人おひとりの声を直接聞くことはできませんでしたが、私は皆さんの意見を本当に聞きたかった。
なぜなら、そこには志や熱意があるからです。
懇親会では、セミナーに参加してくださったいろんな先生方とお話しする機会を持てました。
皆さんが熱い想いを持って、鍼灸師になった経緯、現在の心境や状況、将来の目標、そして葛藤をお話ししてくださいました。
20年前、僕には志しかなかったです。
がむしゃらに走り続けるうちに、いろんな方々と出会い、ご指導をいただき、ご縁が繋がって今があります。本当に感謝です。
技術やノウハウは、あとから自身の頭と労力と経験を用いて、今の時代に合ったもの、目の前で困っている人たちのニーズに合ったものに変えていけばいい。でも、志やハートがなければ最初の一歩は踏み出せませんし、継続もできません。だから、自分の心が折れそうになったときには、鍼灸師になろうと思った志や想いを、もう一度思い出してほしいと思います。
先生が「誰かを幸せにしたい」「誰かの役に立ちたい」と心から願ったのであれば、時代やニーズが変わろうとも、必ず求められる。私はそう考えていますし、僕自身、今でも努力を継続しています。
時代のニーズと患者さんの幸せを考えて努力する先生は、この業界に絶対に必要な人材です。
ぜひ一緒に頑張っていきましょう。
最後になりましたが、このような機会を与えてくださった石橋理事長、神戸東洋医療学院の先生方、当日会場にお集まりくださった先生方、Zoomでセミナーにご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

これからも業界の発展と後進の育成に取り組んでまいります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
治療院経営ラボ 代表 国家資格保有 柔道整復師・鍼灸師 作尾 大介

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