問診での検査と、治療中の検査は何が違うのか?
この記事の要約 この記事では、問診で行う検査と、治療中に行う検査の違いを解説します。結論は、目的が違うということです。問診の検査は、患者さんに体の状態に気づいてもらうためのもので、患者さんが言いたいことを話し終えてから行います。治療中の検査は、検査と施術を短い間隔でくり返し、変化を確かめるためのものです。
「問診で検査をしても、患者さんの反応が薄い」
「検査と治療の流れが、頭の中でごちゃごちゃになる」
「どのタイミングで検査を見せればいいのか、わからない」
このブログをご覧の先生に、こうしたお悩みがあるなら、今回の記事がお役に立てるかもしれません。
先に結論をお伝えします。問診の検査は、患者さんに「ここが良くなるといいですね」と気づいてもらうところまでです。治療中の検査は、施術の前と後で変化を確かめるためのものです。同じ「検査」と呼んでいても、目的が違います。問診の検査でも、治療中の検査でも、患者さんに体の状態を「意識」してもらい、その意味を「認識」してもらうことが欠かせません。
なぜ、問診の検査と治療中の検査はごちゃごちゃになるのか?
こんにちは、治療院経営ラボ代表の作尾大介です。
治療院経営ラボでは、会員の先生からの電話相談を受けています。先日、会員の先生から、こんなご相談をいただきました。
ラボの問診の講座で、私が患者さんに問診をしている音声を聞いたそうです。
「今から治療していきますね」と合意をとったあと、検査と治療が1分もかからない間隔で進んでいく。
自分は何か勘違いしているかもしれないので、流れをおさらいしたい、というご相談でした。
お話をうかがうと、問診の段階で行う検査と、治療中に行う検査を、同じものとして考えていたことがわかりました。
どちらも「検査」と呼ぶので、混ざりやすいのです。けれど、この2つは目的がまったく違います。
問診の検査と治療中の検査は、何が違うのか?
違いを表にまとめます。
| 項目 | 問診の検査 | 治療中の検査 |
|---|---|---|
| 目的 | 患者さんに、体の状態に気づいてもらう | 施術の前と後で、変化を確かめる |
| 行うタイミング | 患者さんが言いたいことを話し終えたあと | 「今から治療していきますね」と合意をとったあと |
| どこまでやるか | 「ここが良くなるといいですね」と共有するところまで | 検査・施術・検査を短い間隔でくり返す |
問診の検査では、まだ施術はしません。たとえば膝が痛い方なら、太もものへこみや、押すと痛む所を確かめてもらいます。そして「ここが良くなるといいですね」と、目指すところを共有します。
このとき私は、「意識」と「認識」の2つを大切にしています。
意識:注意を向けること。患者さんが、自分の体のその場所に目を向けている状態です。
認識:見分けて、意味を理解すること。「ここを良くしていくんだ」と、ご本人がわかっている状態です。
太もものへこみに目を向けてもらうのが、意識です。そのへこみが、これから良くしていく場所だとわかってもらうのが、認識です。
問診の検査は、この2つがそろったところで止めます。
治療中の検査は、施術の一部です。検査をして、良くない所を見つけたら施術する。
そしてまた検査をして、変化を確かめる。この流れを短い間隔でくり返し、必要な所を一つずつ整えていきます。
私の施術で検査と治療が1分もかからずに進むのは、この流れをくり返しているからです。

問診の検査は、いつ見せればいいのか?
患者さんが、言いたいことを全部話し終えてからです。
相手が言いたいことを全部吐き出したあとでないと、検査は意味を持ちません。
来院されたばかりの患者さんの頭の中は、聞いてほしいことでいっぱいです。その状態で「太ももがへこんでいますね」と見せても、言葉が入っていきません。
まず、気になっていることを全部話していただきます。そのうえで「それで、体はいまこうなっていますよ」と、検査で見せていきます。
話し切ったあとだから、検査の結果が自分のこととして伝わるのです。
話を聞くときに私が気をつけているのは、共感の使い分けです。
相手がどう感じているかを頭で推し量ることを、「認知的共感」といいます。相手の感情をそのまま写し取ることは、「情緒的共感」といいます。
問診で使うのは、認知的共感と情緒的共感を組み合わせて展開します。
情緒的共感だけでは、先生のほうが消耗してしまいます。
同じ痛みでも、その人の生活や背景によって意味が違います。問診は、患者さんの認識のフィルターを知る作業でもあります。話を聞き切ってから検査を見せるのは、そのフィルターに合わせて伝えるためです。

検査の見せ方は、患者さんによって変えたほうがいいのか?
変えたほうが伝わります。私は問診の間に、患者さんがどの感覚で反応するタイプかを見ています。
このとき使っているのが、VAK(ブイ・エー・ケー)という考え方です。人がものごとを受け取るときに使いやすい感覚を、視覚・聴覚・体感覚の3つに分けて考えます。
問診の検査では、たとえば次のように見せ方を選びます。
- 押したときの痛みで感じる方には、圧痛(押して痛む所)を確かめてもらう
- 動きで感じる方には、可動域(関節が動く範囲)を見てもらう
- どちらも感じにくい方には、写真を撮って見てもらう
同じ検査でも、相手に合った見せ方を選ぶと「ここが良くなるといいですね」がすっと伝わります。

反応が薄い患者さんには、どう見せればいいのか?
問診の検査のときに、写真を撮っておきます。
患者さんの中には、検査をしても反応が薄い方がいらっしゃいます。とくに、これまでマッサージや強いストレッチだけを受けてきた方は、体の変化を感じにくいようです。腕の上がり方が変わっても、ご本人にはよくわからないことがあります。
そこで、問診の検査の段階で写真を撮っておきます。治療が終わったら、同じ姿勢でもう一度撮ります。2枚を並べて「最初はこうでしたね。今はこうなっています」とお見せします。
それでもわからない方には、こうお伝えします。「わからなくても大丈夫ですよ。体の状態はこちらでつかんでいますので、良くなるように進めていきますね」。
回数を重ねるうちに、少しずつ変化がわかってくる方もいらっしゃいます。
見比べて変化がわかってくると、患者さんの「認識」が変わります。私は、ここから脳の中の書き換えが始まると考えています。
写真は、ご本人だけのものではありません。説明がなかなか伝わりにくい方でも、写真が残っていれば、ご家族が見て状況をわかってくださいます。
ひとつ注意があります。撮った写真は、院内での説明に使うものです。
施術の前と後を比べた写真を、ホームページやSNSに載せることはできません。
柔道整復師法やあはき法で、広告に書ける事項が決められているからです。
撮るときも、患者さんに目的をお伝えし、了解をいただいてから撮ります。

私は、検査の見せ方でどんな失敗をしてきたのか?
ここで、私の失敗談をお話しします。
以前の私は、とにかく治療がしたかったのです。患者さんの話を最後まで聞かずに、「今、体はこうなっていますよ」と検査をして、そのまま治療に入っていました。
体には変化が出ていました。それなのに、患者さんは納得されませんでした。リピートにもつながりませんでした。
患者さんが話し終える前に見せた検査は、患者さんにとって意味を持っていなかったのです。
検査の順番は、院の経営にどう関わるのか?
問診で体の状態を共有できていると、施術の意味が患者さんに伝わります。
自分の体の状態をわかったうえで施術を受けると、施術のあとの変化にも気づきやすくなると私は考えています。「なぜ通うのか」が、患者さんの中にできていくからです。
検査は、手順として覚えるものではありません。患者さんの話を聞き切り、その方に伝わる形で見せるものです。順番を少し変えるだけで、同じ検査でも伝わり方が変わります。
問診は、くり返し練習することで身についていきます。ラボでは、会員の先生同士で問診を練習するワークも行っています。
まとめ
- 問診の検査と治療中の検査は、目的が違う
- 問診の検査は、体の状態に気づいてもらい、目指すところを共有するところまで
- 問診の検査は、患者さんが言いたいことを全部話し終えてから
- 治療中の検査は、検査・施術・検査を短い間隔でくり返し、変化を確かめる
- 見せ方は、相手が反応する感覚に合わせて選ぶ
- 反応が薄い方には、問診の段階で写真を撮っておく。写真は院内の説明だけに使う
明日の問診で、患者さんが話し終えるまで待ってから、検査を見せてみませんか?
「検査をしても、患者さんに伝わっている手応えがない」
「問診から治療への流れが、自分の中で整理できていない」
「患者さんに合わせた説明の仕方を身につけたい」
そんな時には、治療院経営ラボのサポートがきっとお役に立てると考えています。
ラボでは、会員の先生からの電話相談を受けています。今回のように、日々の臨床で迷った問診や検査の流れも、一緒に整理しています。もし、治療院経営ラボに興味のある先生はこちらからお問い合わせください。
最後までブログをご覧いただき、ありがとうございました。あなたの治療技術と患者さんの期待が相乗効果を生み出し、多くの患者さんに愛される治療院となることを心から願っています。
(監修 治療院経営ラボ 代表 柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
治療院経営ラボ
〒662-0913 兵庫県西宮市染殿町3-13 TEL: 0798-20-3340 治療院経営ラボ公式サイト 資料請求はこちら LINEでのお問い合わせ
【参考文献・引用元】 ・柔道整復師法 第24条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019
・あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第7条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000217
・ポール・ブルーム『反共感論』(白揚社、2018年)

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